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総合コメント 2023年度大学入学共通テスト試験速報 | 大学入試解答速報

2023.1.15

1.志願者、受験者数

 新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、3年目となる大学入学共通テスト(以下、共通テスト)が、1月14日・15日の両日に、全国679の会場で実施された。
 確定志願者数は512,581人(昨年530,367人)で、17,786人減少(昨年比96.6%)。
志願者数の内訳をみると、現役生は436,873人(昨年449,369人)で昨年比12,496人減少(昨年比97.2%)、既卒生等も75,708人(昨年80,998人)と5,290人減少(昨年比93.5%)した。
 現役生志願率(令和5年3月の高校卒業見込者のうち、共通テストに出願した者の割合)は45.1%と過去最高を記録した昨年と並んだ。
 受験者数は、外国語(リーディング)ベースで465,043人(昨年481,573人)。英語志願者での受験率は90.7%(昨年90.8%)で、昨年とほぼ同じであった。

2.出題内容

 共通テストも3年目となり、過去2年を踏まえて出題の内容が定着し難易度も調整された印象である。
 全体的な出題傾向は昨年から大きな変化はなく、大学入試センターが示している「思考力、判断力、表現力」を問うという問題作成の基本的な考え方、各教科・科目の出題方針に概ね則った出題であった。
 どの教科も理解の質が問われる問題となっており、身に付けた基本的な知識や解法、公式の使い方などを十分に理解した上で、限られた時間の中で、文章や図表、資料などの複数テクストの内容を正しく把握し、問われている設問の意図がどこに関係するのか情報を整理し、解を導く力や様々な場面で実践的に活用できる力を問う出題となっている。扱われた資料や図表の増減は教科によって差はあるものの、出題傾向としては大きな変化はなかった。資料等を含む問題分量は昨年同様に多く問題の構成が複雑で、限られた時間の中で全て解答するのは厳しかった教科が多かったと思われる。

 共通テストの特徴的な問題として、例えば数学I・Aの2次関数では、日常の事象(バスケットボールのシュート)を題材に、ボールの放物運動について考察する問題が出された。設問を解くために必要な情報を問題文や会話文から素早く読み取る力が必要であり、苦戦した受験生が多かっただろう。
 また、数学II・Bでは、共通テストの作成方針である「数学的な問題解決の過程を重視する」問題の割合が、全体として増加したことも注目される。

 共通テストで多く問われるようになった、資料や図表、グラフなどを読み解いて考える力を問う問題、複数の文章や資料を題材として深く考察する力が求められる問題についても、多くの科目で引き続き出題されている。これらは読み取りと正解を導く過程や判断に時間が必要となり、限られた時間内に多くの情報を処理する能力が求められている。

 新学習指導要領の「総合的な探究の時間」を意識してか、身近なテーマにおける探究学習(物理:落下運動/物理基礎:風力発電について/現代社会:子どもの貧困)や実験・考察問題(物理:コンデンサーの電気容量の測定/化学基礎:しょうゆに含まれる塩化ナトリウムの量を求める)についても、昨年に引き続き複数の科目で出題された。

 時事的なトピックとしては、政治・経済で「少年法改正」を題材とした出題や「SDGs(持続可能な開発目標)」をテーマとした地球環境問題や国際経済についての出題もあった。

 なお、試行調査で示された共通テストの新傾向の1つとして出題が注目されていた「現代文の実用文」は、今回もなく3年連続で出題されなかった。

 教科・科目により多少の違いはあるが、センター試験と比較すると、知識や解法の暗記のみで解答できる問題は少なくなっており、教科学力の理解の質と活用の力を問う問題が出題されている。一方で従来のセンター試験と同レベル・内容の出題も依然として見られる。
 共通テストの特徴的な出題形式に慣れることと併せて、各科目の学力の土台となる知識・技能の習得と鍛錬、またセンター試験の過去問演習は十分に対策しておきたい。

 受験生にとっては初見と思われる教科書に載っていない資料や実験など、昨年に引き続き出題されている。これらの問題では、資料や問題文から得られる情報と授業や教科書で学んだ既知の知識を基に関連づけ、推論、考察する力が問われている。

 大学入試センターの作成方針にあるような、「どのように学ぶか」を踏まえた問題の設定として、授業において生徒が学習する場面、身近な出来事や世の中で起こっていることから課題を発見し解決方法を構想する場面、資料やデータを基に考察する場面など、学習の過程を意識した出題が昨年同様に見られた。この出題傾向は今後も継続することが想定されるので、日常生活や社会の出来事にも目を向けておく必要がある。

 ※各教科・科目の詳細は教科分析にてご確認ください。
 特徴、難易度、出題分量、出題傾向分析、設問別分析を掲載。

3.平均点

 5教科7科目(900点満点)総合の現時点での平均点は、理系で555点、文系で543点になると予想される。
 ※理科②で科目間の平均点の開きが大きいため、得点調整の可能性があると思われる。今後の大学入試センターの発表に注意していただきたい。

  河合塾は、ガンバル受験生を応援し続けます!!


 新高1・2・3生のみなさんへ

 共通テストでは、単なる知識問題ではなく、知識を活用して運用する力、図表やグラフを分析して読み解く力、長めの文書や多くの資料を時間内に読み込んで正確に理解する力が必要となる。
 日頃の学習から教科書に出てくるような標準的な知識・項目をしっかり身に付けること。考えることを意識しながら学習をする癖、習慣を身に付けておくと良い。
 受験学年になったら、共通テストはもちろんセンター試験時代を含めた過去問に多く取り組み、限られた時間内に問題を解く練習を積んでおくことが有効な対策になる。まずは、教科書に載っている基本的な知識の習得や解法、公式の使い方などをしっかりと身に付けておいてほしい。
 ただ、それらの知識や公式・解法などを単に暗記していればすんなり問題が解ける訳ではなく、なぜそうなるのかという本質的な理解の上で、様々な出題に対応できる「知識を活用する力、使いこなす力」が必要である。例えば知識はその意味や相互の関係などについて、資料、史料、図、グラフ等も合わせて総合的に理解しておきたい。
 また、共通テストで出題される問題の場面設定は、日常的な場面や学習の場の設定も増えてきている。普段の授業や日々の学習の中で興味を持ったり疑問に思ったことを整理したり、意見をまとめたりすることを意識して、自分自身の頭でしっかりと考え、知識を活用する力を伸ばしてほしい。