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化学 [分析] 2023年度大学入学共通テスト速報 | 大学入試解答速報

基本的な知識に関する問題に加え、実験問題を中心に与えられた情報と既習の知識を組み合わせて判断する力が重視された。

難易度

昨年並み

平均点が低かった昨年に引き続き、問題文やグラフから必要な情報を読み取ったり、正しいグラフを判断したりする思考力を要する問題が多く出題された。

出題分量

大問数は、昨年と同じ5題である。マーク数は昨年より2増え、小問数は1増えた。ページ数が2増え、全体としての分量は昨年よりやや増加した。

出題傾向分析

第1問は物質の構成、物質の状態、第2問は物質の変化で、いずれも理論分野からの出題であった。第3問は無機物質、物質の変化、第4問は有機化合物、高分子化合物からの出題であった。第5問は、硫黄を題材とした総合問題であり、基本的な問題に加えて、初見の実験に関する資料やデータを読み取って判断する問題も含まれていた。また、昨年はみられなかったグラフを作成する問題が出題された。
硫化カルシウムの結晶、過酸化水素の分解速度、1族と2族の金属の反応、硫化水素の酸化還元滴定など、与えられた条件や図・グラフを正確に読み取り、計算も交えて分析する力を試す問題が多く、問題の情報と知識を組み合わせて判断する力が重視された。
高分子化合物(天然、合成高分子)は、昨年同様、小問1問のみであった。

2023年度フレーム(大問構成)

大問 分野 配点 マーク数 テーマ
1 物質の構成、物質の状態 20 8 化学結合、コロイド、気液平衡、結晶
2 物質の変化 20 7 化学反応と熱、電気分解、化学平衡、反応速度
3 無機物質、物質の変化 20 7 無機物質、化学反応と量的関係
4 有機化合物、高分子化合物 20 8 脂肪族化合物、芳香族化合物、高分子化合物、油脂
5 無機物質、物質の変化 20 5 無機物質、化学平衡、酸化還元、吸光光度法による濃度測定
合計 100 35  

2022年度フレーム

大問 分野 配点 マーク数 テーマ
1 物質の構成、物質の状態 20 6 電子配置、化学量、気体、非晶質、気体の溶解度
2 物質の変化 20 6 反応熱、電離平衡、反応速度と化学平衡、化学量、電池
3 無機物質、物質の変化 20 5 無機物質、化学反応と量的関係
4 有機化合物、高分子化合物 20 7 脂肪族化合物、芳香族化合物、異性体、天然高分子化合物、合成高分子化合物
5 有機化合物、物質の変化 20 9 不飽和炭化水素、アルケンの酸化の反応熱および反応速度
合計 100 33  

設問別分析

第1問

化学結合、コロイド、気液平衡、塩化ナトリウム型の結晶の構造が出題された。
問1は、単結合のみからなる物質を選択する問題であり、基本的な知識が問われた。問2は、コロイドに関する用語選択の問題である。問3は、気液平衡の問題で、圧縮後の水蒸気の圧力が飽和蒸気圧に等しいことをおさえた上で気体の状態方程式を用いると、液体の水の物質量が求められる。問4は、硫化カルシウムの結晶構造(塩化ナトリウム型)に関する問題で、配位数、イオン半径と単位格子の一辺の関係、結晶の質量と体積から単位格子の体積を求める計算、限界半径比が出題された。限界半径比は、教科書の発展で扱われている内容であり、問題中に解答を導く図などが与えられておらず、やや難易度が高い。

第2問

化学反応と熱、電気分解、化学平衡、反応速度が出題された。
問1は、二酸化炭素とアンモニアから尿素を生成する際の反応熱を求める基本的な計算問題であった。問2は、硝酸銀水溶液と塩化ナトリウム水溶液を電気分解する際の各電極で起こる反応を問うものであった。問3は、水素、ヨウ素およびヨウ化水素の平衡に関する計算問題で、はじめの平衡状態から平衡定数を求め、平衡定数が一定であることを用いて、別の平衡状態の物質量を求めることができる。問4は、過酸化水素の水と酸素への分解反応を題材にした反応速度に関する問題であった。aは、過酸化水素の分解反応における触媒に関する正誤問題、bは、過酸化水素の分解反応速度の計算問題であった。cは、発生した酸素の物質量の時間変化のグラフに関する問題で、反応速度定数が2倍になったときのグラフを選択する内容であった。反応開始時のグラフの傾きが2倍になること、最終的な生成量は変わらないことに着目して解く必要があり、やや難易度の高い問題であった。

第3問

無機物質に関する大問であり、フッ化水素、金属イオンの系統分離、金属単体の反応と量的関係、混合物の成分分析が出題された。
問1は、フッ化水素に関する正誤問題であり、フッ化水素の性質に加え、ハロゲンの酸化力の強弱が問われた。問2は、金属イオンの系統分離に関する問題であった。問3のaは金属単体の酸や水との反応に関する量的関係を問う問題であった。bはマグネシウムの混合物の分析実験の装置に関する問題で、発生する気体が二酸化炭素と水であることから、有機化合物の元素分析と同じ要領で判断できる。cはbの実験結果からマグネシウムの混合物の組成を決める計算問題で、発生した水が水酸化物由来、二酸化炭素が炭酸塩由来であることがポイントであった。

第4問

有機化合物に関する大問であり、天然有機化合物および合成高分子化合物も含めて出題された。
問1は、与えられた2つの条件を満たすアルコールを選択する問題であった。問2は芳香族化合物、問3は高分子化合物の構造に関する正誤問題であり、いずれも基本事項を確認する内容であった。問4は、トリグリセリド(油脂)に関する問題であった。aは、トリグリセリドXに付加する水素の物質量を求める計算問題であった。bは、脂肪酸Aの示性式を選択する問題であり、脂肪酸AとBは、いずれも過マンガン酸イオンの赤紫色を脱色させることから不飽和脂肪酸であることが判断できる。さらに、1分子のXに含まれるC=C結合の数およびXを完全に加水分解したときに得られるAとBの物質量の比から、1分子のAとBに含まれるC=C結合の数を決定すればよい。cは、Xを酵素で加水分解したときに得られる化合物Yの構造式を決定する問題である。Xには鏡像異性体が存在し、Yには鏡像異性体が存在しないことに着目すればよい。

第5問

硫化水素および二酸化硫黄を題材とした総合的な問題であった。
問1のaは、硫化水素と二酸化硫黄の発生や反応に関する正誤問題であった。bは、二酸化硫黄、酸素、三酸化硫黄の化学平衡を題材に平衡の移動や反応速度に関する基本的な理解が問われた。問2は、硫化水素の体積をヨウ素滴定によって求める計算問題であった。問3は、光の透過率を用いて二酸化硫黄の濃度を測定する実験(吸光光度法)の内容であり、与えられた資料を読み取って、実験の原理を理解して解答する問題であり、思考力を要した。aでは、与えられた透過率の対数値と二酸化硫黄のモル濃度のデータをもとに方眼紙にグラフを描くと、解答を導くことができる。bでは容器の長さと光の透過率の関係に関する問題で、対数値が2倍になると、真数の値が2乗になる数学的な処理ができるかがポイントであった。

過去の平均点の推移

22年度 21年度 20年度 19年度 18年度
47.6 57.6 54.8 54.7 60.6