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国語 [分析] 2023年度大学入学共通テスト速報 | 大学入試解答速報

複数の文章や素材を組み合わせた出題が定着した。

<現代文>第1問では、ル・コルビュジエの建築物における窓について考察した二つの文章が出題された。昨年の第1問と同様に、異なる筆者の文章が取りあげられている。第2問は小説からの出題で、語句の意味を問う知識問題が見られなかった点は、昨年と同じ。ただし設問数は増えて問7までになっている。
<古文>歌論からの出題は2018年度センター試験『石上私淑言』以来である。しかし、本文の内容にはまったく歌論的なところはなく、和歌に関連した説話といった趣である。本文や設問の形式は2022年度の本試験・追試験を踏襲したもので、共通テストとしての形式がある程度決まってきたように思われる。
<漢文>2年続いていた漢詩の出題はなかった。

難易度

昨年並み

<現代文>第1問は、窓について建築論の観点から説明した文章が出題されたが、【文章II】については論旨を把握するのは必ずしも容易ではない。第2問(小説)は、昨年の問題に比べればオーソドックスな出題という印象は受けるが、必ずしも解きやすいというわけではない。
<古文>本文は昨年に比べて読みやすくなっている。設問・選択肢についても紛らわしいものはなかった。
<漢文>漢詩は出題されず、二つの本文はともに散文で、やや硬質な内容であった。文字数は減少したものの、漢文の基礎知識のみで解答できる問題が減少し、本文の内容に基づいて解答する問題が増えた。

出題分量

<現代文>第1問は、二つの文章をあわせて3500字程度であり、昨年並みである。第2問(小説)は、昨年に比べると、本文が約4000字と長くなっており、設問数も増えて問7までになっている。マーク数は変わっていないが、知識問題がなくなって全問が読解問題になっていることもあり、受験生の負担はやや増えたと考えられる。
<古文>昨年は1148字であったが、今回は1321字で173字増えた。
<漢文>【予想問題】38字、【模擬答案】154字、合計192字であり、昨年から13字減少。設問数は7、マーク数は9であり、昨年と比べて増減なし。

出題傾向分析

<現代文> 第1問は、昨年と同様、基礎的な読解力を問う問題が出題された。問1(ii)に漢字の意味を問う設問が出題されたことも昨年と同傾向である。また、問6は、昨年は生徒の【メモ】における空欄を補う設問であったが、今年は生徒の話し合いにおける空欄を補う設問であった。第2問では、センター試験以来一昨年まで語句の意味を問う知識問題が出題されていたが、今回は、昨年に続きそうした問題は出題されていない。この傾向は今後も続く可能性が高いのではないかと考えられる。問7は、【資料】とそれを踏まえた【構想メモ】および【文章】とを組み合わせた出題形式になっている。
<古文>本文は平安時代後期の歌人である源俊頼の歌論書『俊頼髄脳』からの出題で、問4に同じ俊頼の私家集『散木奇歌集』の一節が引用されている。出典は歌論であるが、出題本文は、殿上人が皇后寛子のために船遊びをし、その宴を盛り上げるために連歌(短連歌)を企画したが、誰も句を付けることができずに終わるといった話で、説話といってよいものであった。問4は、共通テストの特徴である複数テクストを読ませる傾向が踏襲されており、連歌(短連歌)に関連した別の話を参考として読ませて、教師と生徒の話し合いの中で連歌(短連歌)や和歌修辞について理解を深めさせる問題になっていた。
<漢文>唐の白居易が官吏登用試験に備えて自作した【予想問題】と【模擬答案】が出題され、「君主が賢者を探す方法」を主題とした評論であった。問1では語句の基本的知識が問われたが、問2と問3は句法を踏まえて文意を把握する問題、問4〜問6は傍線部の前後の文脈を読み取る問題、問7は【模擬答案】の主旨を問う問題が出され、全体として基礎知識よりも文章の読解力を必要とする問題の比重が高まった。

2023年度フレーム(大問構成)

大問 分野 問数 マーク数 出典
1 論理的文章 6 12 文章I 柏木博 『視覚の生命力−イメージの復権』
文章II 呉谷充利 『ル・コルビュジエと近代絵画−二〇世紀モダニズムの道程』
2 文学的文章 7 8 梅崎春生 「飢えの季節」
資料 一九四五年九月発行の雑誌に掲載された広告
3 古文 4 8 『俊頼髄脳』
『散木奇歌集』
4 漢文 7 9 白居易 『白氏文集』
合計   37  

2022年度フレーム

大問 分野 問数 マーク数 出典
1 論理的文章 6 11 文章I 檜垣立哉『食べることの哲学』
文章II 藤原辰史『食べるとはどういうことか』
2 文学的文章 5 8 黒井千次「庭の男」
3 古文 4 8 文章I 『増鏡』
文章II 『とはずがたり』
4 漢文 7 9 阮元『●(「研」の下に「手」)経室集』
合計   36  

設問別分析

第1問

問1の漢字の問題は、(i)と(ii)に分かれ、(i)は従来通りの出題、(ii)は傍線部の漢字の意味を問う、昨年と類似した設問であった。問2〜問5は、傍線部の内容について本文に基づいた理解を問う設問である。問6は、二つの文章を読んだ生徒の話し合いにおける三つの空欄を補う設問。本文だけでなく、話し合いの文脈を踏まえて選択肢を吟味する必要がある。(i)は紛らわしい選択肢もあり、受験生は解答を確定するのにやや迷ったと思われる。

第2問

語句の意味を問う知識問題は、昨年に続き出題されなかった。主人公の心情をそのつど問う設問や、消去法を必要とする設問が多く、その点は「大学入試センター試験」から基本的に変わっていない。問7は、【構想メモ】や【文章】が付け加えられている理由を考え、出題の意図をくみ取ることが何より重要である。

第3問

問1は、短い語句の解釈問題で、基本的な古語の意味や文脈理解が問われた。問2は、語句の表現に関する説明問題で、共通テスト初年度から続く新傾向の問題であったが、今までの共通テストの問題に比べて文法色が強くなった。問3は、指定した段落の内容を問う問題で、形式としては2022年度追試験と同じである。問4は、教師と生徒が話し合う2022年度本試験を踏襲したものであった。源俊頼の私家集の一節が引用され、それを踏まえて生徒が話し合う形式で、(i)修辞(掛詞)に注目した連歌の解釈、(ii)本文「もみぢ葉の」の句の解釈、(iii)本文の読解の三点が空欄補充で問われた。

第4問

白居易が官吏登用試験に備えて自作した【予想問題】と【模擬答案】で、「君主が賢者を登用するにはどうすればよいか」を論じた評論文であった。漢文の基礎知識だけで解答できる問題が昨年よりも減少し、文章の内容理解の問題が増加した。問1は語の意味の問題であり、(イ)は基本的な語い力が問われたが、(ア)(ウ)は文脈を踏まえて「弁」「由」の意味を考える必要があった。問2は解釈の問題であったが、二重否定の句法に注意して文意を正しくとらえる必要があった。問3は返り点の付け方と書き下し文の問題であったが、「豈不〜」の表現と「以」の用法に注意して文意を考える必要があった。問4・問6の比喩を説明する問題と問5の空欄補充の問題は、傍線部の前後の文脈を踏まえなければならない。問7は作者の考えの主旨を問う問題であったが、【模擬答案】の第二段落の内容を把握すれば正解できる。

過去の平均点の推移

22年度 21年度 20年度 19年度 18年度
110.3 117.5 119.3 121.6 104.7