世界史B [分析] 2023年度大学入学共通テスト速報 | 大学入試解答速報
すべての大問で資料の読み取りが必要。会話文を利用した問題が昨年より倍増。前近代史が多く、第二次世界大戦後からの出題が少なかった。中国の文化史に関連する問題が多かった。
大問5題、マーク数34で、すべての大問に資料(史料文・図版・家系図・表・グラフ)の読み取り問題があったことは昨年と同じ。近現代より前近代からの出題が多く、アジア史、とくに中国の文化史に関連する問題が多かった。また、会話文を利用した問題が昨年より倍増して、ページ数が4ページ増加した。資料や会話文など複数の材料から必要な情報を読み取り、総合的に判断する問題が多く、注意深く解答することが必要である。難易度は昨年より高いだろう。
【ズバリ的中】<本試験>第1問 問6⇒<河合塾教材>冬期・直前講習/突破シリーズ 共通テスト本番突破テスト世界史B 第3問 問2
難易度
難化
受験生が苦手とする第二次世界大戦後からの出題が少なかったとはいえ、資料や会話文など複数の材料から必要な情報を読み取り、総合的に判断する問題が非常に多いこと、文化史や社会経済史が多いことなどから判断すると、難化したと思われる。
出題分量
大問数5題、小問数34問で、大問数・小問数ともに昨年と同じ。ただし、会話文を利用した問題が昨年度より倍増しており、その分、問題のページ数が4ページ増加した。
出題傾向分析
地域については、アジア・アフリカ史と欧米史がほぼ同数だが、アフリカ史からの出題はほとんどなく、アジア・アフリカ史の中では中国史・イスラーム史・東南アジア史の出題が目立った。とくに、中国の文化に関連する問題が多かった。したがって、分野については、政治史が多かった昨年よりも、文化史が増加し、また第5問がすべて社会経済史からの出題であったことから、社会経済史も増加した。時代については、近現代史より前近代史からの出題が多い。第二次世界大戦後からの出題が非常に少なく、第二次世界大戦後だけを問う小問はなかった。すべての大問で資料(史料文・図版・家系図・表・グラフ)の読み取り問題があったことは昨年と同じだが、会話文を利用した問題が昨年より倍増しており、昨年公表された「歴史総合・世界史探究」の試作問題と方向性が類似する。また、会話文のほとんどが授業の場面など、生徒と先生の会話であり、これは昨年の問題や試作問題と同じである。資料と会話文など複数の材料から必要な情報を読み取り、総合的に判断する問題が多いが、従来のセンター試験型の知識のみを問う4択問題もある。地図問題は1問で、昨年の3問から減少した。なお、一昨年は1問であった。
2023年度フレーム(大問構成)
大問 | 分野 | 配点 | マーク数 |
1 | 歴史の中の女性 | 16 | 6 |
2 | 君主の地位の様々な形での継承 | 18 | 6 |
3 | 疑問・議論を通じて世界史の知識を深める授業や対話 | 24 | 8 |
4 | 世界史上の様々な歴史資料 | 24 | 8 |
5 | 歴史統計 | 18 | 6 |
合計 | 100 | 34 |
2022年度フレーム
大問 | 分野 | 配点 | マーク数 |
1 | 世界史上の学者や知識人 | 27 | 9 |
2 | ある出来事の当事者の発言や観察者による記録 | 15 | 5 |
3 | 世界史上の人々の交流や社会の変化 | 24 | 8 |
4 | 歴史評価の多様性 | 17 | 6 |
5 | 世界史上の墓や廟 | 17 | 6 |
合計 | 100 | 34 |
設問別分析
第1問
Aでは女性参政権の成立や拡大をテーマとした近現代史、Bでは顔之推『顔氏家訓』からの引用文を利用した前近代の中国史が出題され、いずれも会話文が用いられている。問3は会話文の内容を踏まえて解く形式になっているが、3人のメモの内容が史実か否かを吟味すれば解答できる。問5は資料から、北方における女性の活発な活動が「平城に都を置いていた時代」であることを読み取り、そこから北魏からの風習であると判断して、その延長上に則天武后の皇帝即位が実現したと考える問題である。
第2問
Aではフランス王家の紋章と家系図を用いた前近代のヨーロッパ史、Bではファーティマ朝におけるカリフ位の正統性の是非に関する資料を用いたイスラーム史が出題された。問1は「左の図柄」のみでカペー家とアンリ4世とのつながりを判断することは難しいが、家系図・会話文の情報も含めて総合的に判断する問題である。問4は3箇所ある空欄ウのうち、最初の空欄だけで判断するとアッバース朝の可能性もあるが、2カ所目の空欄の直後から、ウマイヤ家の流れをくんでいること、3カ所目の空欄の直前から、ウは10世紀に新たにカリフを称した王朝であることを読み取り、後ウマイヤ朝の支配領域すなわちイベリア半島の歴史を問う問題であると判断する。
第3問
Aではマクロン大統領の演説を資料に用いてナポレオン時代のフランスを出題し、B・Cでは科挙に関する授業を想定した会話文、中国における書籍分類の歴史についての会話文をそれぞれ用いて中国史が出題された。問2では会話文中の空欄に入る「ハイチ」と「セントヘレナ」の位置を選ばせる地図問題が出題された。日頃から地図を活用した学習を心がけたい。また問3・問6・問7・問8では、儒学や歴史書など中国文化史に関する基礎知識をもとに、会話文に記された情報を読み取って正解を導く問題が出題された。政治史や経済史と同様、手薄になりがちな文化史も日頃から意識的に取り組むことが大切である。
第4問
歴史資料をテーマに、Aではビザンツ帝国・ウマイヤ朝で発行された金貨、Bではマラトンの戦いについて記した史料文、Cではブリテン島に移動したアングル人に関する史料文を扱って出題された。問8は教科書の知識だけで解答できるが、問1〜7は、知識に加えて資料や会話文の内容から解答に必要な情報を読み取って総合的に判断する必要がある。問7は年代整序問題であるが、具体的な年代が判断できなくても、問6をふまえて、資料の説明文から「アングル人」の意味する内容の変遷と変化の契機を読み取り、資料1が変化する前、資料3が変化の契機となった出来事、資料2が変化した後に関して記したものであると判断し、その順に並べればよい。
第5問
歴史統計を用いた世界史の授業での会話文を扱った問題で、Aでは東南アジア各地の輸出先とその比率を示した表を、Bではイングランドの人口統計やイギリス・アイルランドからアメリカ合衆国への移民数を示したグラフを取りあげている。問2は、表の空欄に該当する国名とその国でゴムの需要が高まった背景を組み合わせる問題で、事実そのものを問うのではなく、事象の背景を考えさせる問題であった。問3〜5は、会話文の読み取りと表やグラフの読み取りを行って双方の情報を組み合わせる問題。すべて社会経済史からの出題であった。
22年度 | 21年度 | 20年度 | 19年度 | 18年度 |
65.8 | 63.5 | 63.0 | 65.4 | 68.0 |