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倫理,政治・経済 [分析] 2023年度大学入学共通テスト速報 | 大学入試解答速報

全設問が単独科目「倫理」「政治・経済」との共通問題。成年年齢引下げにともなう少年法改正など時事的なテーマも扱われた。

全体の大問数・設問数に変化はなく、各大問の設問数・配点も昨年度と同じ。すべての設問が単独科目「倫理」「政治・経済」との共通問題。倫理分野では、原典資料の使用数が昨年度よりも増えた一方、図画を用いた設問は無くなった。政治・経済分野では、2021年の少年法改正をはじめ、日本の安全保障や日本銀行の金融政策など、近年の出来事を意識させる設問が目立った。

難易度

難化

倫理分野では、比較的取り組みやすい設問が多く出題されたが、なかには受験生が見落としがちな知識事項を扱うものもあった。政治・経済分野においても、多くの設問は教科書の知識で対応が可能であるが、判断に迷う難しい設問も出題されている。

出題分量

大問数・設問数は昨年度と同じ。1問で2ページを使用する設問が昨年度よりも一つ増え、全体では2ページ増えている(昨年度は全37ページ、今年度は全39ページ)。倫理分野から16問(50点配点)、政治・経済分野から16問(50点配点)で、両分野のバランスは例年と同様。

出題傾向分析

倫理分野、政治・経済分野ともに、概ね教科書の範囲内の知識で対応できる設問で構成されている。倫理分野では、高校生による会話や日記、レポートなどの内容を踏まえて解答する設問が昨年度と同様に出題されている。引用資料(思想家の原典資料など)の使用数が昨年度よりも一つ増えたが、昨年度まで見られた図画(絵画写真など)を用いる設問は出題されなかった。政治・経済分野では、引用資料(グラフ、判例文など)を用いる設問が3問あり、昨年度よりも増加した。出来事の時系列を考えさせる設問は、昨年度と同様、1問出題された。矢印を用いたフローチャートの図を用いた設問や複数の判例文を用いた設問が出題されたが、これらは2年前の共通テストに類似した形式と言えよう。

2023年度フレーム(大問構成)

大問 分野 配点 マーク数
1 【倫理】源流思想 12 4
2 【倫理】日本思想 12 4
3 【倫理】西洋思想 12 4
4 【倫理】現代の諸課題と青年期 14 4
5 【政治・経済】政治・経済総合 19 6
6 【政治・経済】現代政治の諸課題 19 6
7 【政治・経済】SDGsの意義と課題 12 4
合計 100 32

2022年度フレーム

大問 分野 配点 マーク数
1 源流思想 12 4
2 日本の思想 12 4
3 西洋の近現代思想 12 4
4 現代社会の諸課題と青年期 14 4
5 政治・経済総合 19 6
6 経済主体の関係 19 6
7 地方自治の現状・課題と企業の役割 12 4
合計 100 32

設問別分析

第1問

「正義について」というテーマのもとに、ギリシア哲学、ユダヤ教、仏教、古代中国思想、イスラームなど、東西の源流思想から広く基本的な事項が出題された。問1のバラモン教の身分制度とヒンドゥー教の関係について書かれた選択肢については、教科書に詳しい記載が無いため判断に苦しんだ受験生も少なくなかっただろう。

第2問

「問い」をテーマとする会話文をもとに、日本の思想が幅広く取り上げられた。具体的には、『古事記』などに見られる古代日本の神話、最澄、伊藤仁斎などの思想が出題された。問2は日本の神話に関するやや細かい知識が問われたため、難問であった。

第3問

「自由」をテーマとする高校生の会話文をもとに、西洋近代思想が出題された。具体的には、ベンサム、ロック、カントなどの思想が取り上げられたが、標準的な知識に加えて、会話文や資料文の正確な読解力が求められる設問が見られた。

第4問

「運」と「格差」をテーマとする高校生の会話文をもとに、現代社会の諸課題と青年期の分野から様々な事項が出題された。ホリングワース、センの思想についての設問は、標準的な知識で対応できる。自我の目覚めについてのシュプランガーの思想は、やや発展的な事項であり、判断に苦しんだ受験生が少なくなかっただろう。ロールズの思想を取りあげた問3は、資料の読解に加えて「正義の二原理」についての十分な理解も求められる。前出の会話文の趣旨を踏まえた問4の空欄補充の問題は、会話中に空欄が4つ設けられており、正答するには正確な読解が必要となる。

第5問

日本の地域社会と行政サービスの現状と課題、グローバル化と日本の産業構造の変化、日本の財政金融政策と国民経済に関する疑問の 3 つのテーマに関連して、都市の過密化と地方の過疎化、日本の地方財政、地方公共団体・非営利組織(NPO)・中小企業、地域におけるリサイクルの状況、日本国債の保有者の構成比・保有高の変化、民間最終消費支出と民間企業設備投資の変化について出題された。問4は、思考力を試す問題であり、設問に沿って考えていけば正解を選ぶことができる。問5・問6は、知識を前提に思考力を問う設問。

第6問

戦争と平和・日本の議会制民主主義をテーマとして、中東での紛争と対立、国際連盟規約と国際連合憲章、日本の安全保障、委任の連鎖と責任の連鎖、少年法改正、世論形成における個人やマスメディアの表現活動の意義について出題された。問4は、「委任の連鎖」や「責任の連鎖」という聞きなれない用語が使われているが、憲法に関する基本的な知識が問われている。問5は、2021年の少年法改正に関する出題であり、時事問題についての関心が求められている。問6は、憲法第21条第1項に関する最高裁判例の趣旨を読み取る力が試されている。

第7問

SDGsの意義と課題を中心に、環境問題や人権保障に関する国際的取組み、各国の対外債務について出題された。問1は、持続可能な開発に関する世界首脳会議と国連ミレニアム宣言の順番が問われており、やや難しい。問3では人権理事会や ILO(国際労働機関)など、やや細かい知識が求められている。メモと表の考察を判定する問4は読解力と思考力が試されている。

過去の平均点の推移

22年度 21年度 20年度 19年度 18年度
69.7 69.3 66.5 64.2 73.1