世界史B [分析] 2024年度大学入学共通テスト速報 | 大学入試解答速報
すべての大問で資料(史料文・グラフ・図版・地図)の読み取りが必要であり、読み取りだけで解答できる問題もあるが、大半は資料やその解説文など複数の材料から必要な情報を読み取り、習得した知識と組み合わせて総合的に判断する問題。欧米史や前近代史からの出題が多い。本試験で初めて連動式の問題が出題された。
大問4題、マーク数33で、昨年の大問5題、マーク数34から減少。会話文を利用した問題は半減した。ただし、問題全体のページ数は変化がなく、資料(史料文・グラフ・図版・地図)の読み取り問題がすべての大問にあったこと、前近代史や欧米史からの出題が多かったことも昨年と同じだった。資料や会話文など複数の材料から必要な情報を読み取り、習得している知識と結び付けながら総合的に判断する問題が多く、注意深く解答することが必要である。
難易度
やや易化
資料は多いが正誤判定をする際に参考にすべき箇所が昨年度に比べて明瞭であったこと、話しの方向性を見極めなくてはならない会話文が激減したことで読み取りやすい問題となったことなどから判断すると、やや易化したと思われる。
出題分量
大問数4題・小問数33問で、大問数5題・小問数34問だった昨年より減少し、会話文を利用した問題が半減した。しかし、問題のページ数は昨年と同じ32ページであり、出題分量の大きな変化はない。
出題傾向分析
地域については、欧米史がアジア・アフリカ史よりも多く、欧米史ではヨーロッパ史からの、アジア・アフリカ史では中国史からの出題が多かった。一方でラテンアメリカ史、オセアニア史、東南アジア諸国史、サハラ以南のアフリカ史からの出題はなかった。分野では政治史が多いが、社会経済史・文化史もうまく組み込まれて出題されていた。時代については、昨年同様、近現代史より前近代史からの出題が多い。第二次世界大戦後からの出題は3問出題されており、第二次世界大戦後だけを扱う小問がなかった昨年に比べると増加したと言える。地図を読み取る問題はあったが、都市や地域の位置を問う従来の地図問題はなかった。すべての大問で資料(史料文・グラフ・図版・地図)の読み取り問題があり、資料や資料の説明文など複数の材料から必要な情報を読み取り、習得した知識と組み合わせながら総合的に判断する問題が多いのは、一昨年公表された「歴史総合,世界史探究」の試作問題と類似する方向性である。
2024年度フレーム(大問構成)
大問 | 分野 | 配点 | マーク数 |
1 | 様々な地域や時代に見られた体制と制度 | 27 | 9 |
2 | 世界史における諸勢力の支配や拡大 | 23 | 8 |
3 | 交通の発達とその影響 | 22 | 7 |
4 | 世界史上の様々な言語や文字と、人々の文化やアイデンティティ | 28 | 9 |
合計 | 100 | 33 |
2023年度フレーム
大問 | 分野 | 配点 | マーク数 |
1 | 歴史の中の女性 | 16 | 6 |
2 | 君主の地位の様々な形での継承 | 18 | 6 |
3 | 疑問・議論を通じて世界史の知識を深める授業や対話 | 24 | 8 |
4 | 世界史上の様々な歴史資料 | 24 | 8 |
5 | 歴史統計 | 18 | 6 |
合計 | 100 | 34 |
設問別分析
第1問
Aは『史記』と『読通鑑論』の一節を用いた前近代の中国史、Bはイングランド国王エドワード死後の政治的情勢に関する資料を用いた中世ヨーロッパ史、Cは20世紀におけるイギリスの福祉制度に関するサッチャー首相のインタビューを用いた近現代ヨーロッパ史。資料(史料文)が多く一見煩雑な印象を受けるが、封建制、ハロルド王の即位、福祉制度についてそれぞれ肯定する立場と否定する立場といった対比が明瞭であった。問3は永楽帝が帝位につく前は燕王であり、建文帝を打倒する靖難の役を経て皇帝となったという知識を基に、Yが「一族に対する分権の弊害」の例と判断する。問4は文章から空欄イの人物が後にローマ教皇から戴冠されたことや、この戴冠が神聖ローマ帝国の起源となったことを読み取り、この人物がオットー1世であると判断する。
第2問
Aはアレクサンドロス大王のアジア支配についてのゼミ発表を、Bは19世紀のアメリカ合衆国で発布された法律を、Cは朝鮮戦争における休戦交渉をテーマとして、古代ギリシア史・イラン史、19世紀のアメリカ合衆国史、20世紀後半のヨーロッパ史・アジア史が主に出題された。問4・問5は共通テスト本試験では初めて出題された連動式の問題であり、問4で選んだ解答によって問5の解答が変わるため、それぞれの選択肢との関連を考察する必要がある。問6は資料や文章の内容から、朝鮮戦争におけるスターリンや毛沢東と、空欄イ・ウに入る勢力との関係を読み取って解答する。問7は文章から、空欄エに入る国は1948年のクーデタによって共産党政権が成立した国であることを読み取り、「チェコスロヴァキア」と判断する。
第3問
Aはインド亜大陸における交通の歴史を、Bは20世紀のアメリカ合衆国における交通手段の変化を、Cはロシアの歴史と文化を扱った問題。問1は会話文から空欄アに「アショーカ王」が入ることを判断した上で行う正誤判定問題であった。問3はメモ1・メモ2のそれぞれの正誤の判断が必要で、消去法が使えない形式であったため、図1・図2で示されたインドの地図から情報を正確に読み取る必要があった。問6も資料2をしっかり読まないと正解できず、問7も問3と同様の形式で消去法が使えないため会話文から情報を正確に読み取らなければならなかった。
第4問
Aはシリア語の果たした役割を、Bはコロンブスの時代におけるスペイン語の影響を、Cは顔真卿の作品をめぐる唐代・宋代の文化人の評価を扱った問題。問1と問3は会話文の読み取りが必要な問題で、問1は会話文から空欄アに「コンスタンティヌス帝」が入ることを判断する必要がある。問6は「コロンブスはスペイン人である」という誤った説をもたらした「思い込み」の理由を文章中から読み取った上で、その背後にある価値観を考えさせる問題である。問7・問8は空欄に入れる用語に関連した問題、問9はメモ1・メモ2のそれぞれの正誤の判断が必要な消去法の使えない問題で、3問ともすべて会話文中からの情報の読み取りが不可欠な問題であった。
23年度 | 22年度 | 21年度 | 20年度 | 19年度 |
58.4 | 65.8 | 63.5 | 63.0 | 65.4 |