日本史B [分析] 2024年度大学入学共通テスト速報 | 大学入試解答速報
昨年に引き続き、歴史事象を多面的・多角的に考察させる問題が多く出題され、特に史料を用いた出題が増加した。
第3問と第6問では、3つの史料とその内容について述べた2つの文章との組合せを選択させる新形式の問題が出題された。
難易度
やや難化
昨年と同様に多様な資料を用いた出題がなされ、受験生に「思考力・判断力」を求める姿勢が継続している。また、受験生が苦手とする史料の読解問題がいっそう増加したうえ、複雑な組み合わせの設問(第2問問5:8択、第3問問4:6択など)も出題されてお り、全体としては昨年よりやや難化したと思われる。
出題分量
大問数・小問数は昨年と同じであった。
出題傾向分析
大問の構成では、第1問を除いて高校生の会話や学習・探究が素材とされ、昨年に引き続き、高校生の「主体的な学び」を踏まえた場面設定がなされている。個々の設問では、史料・図版・統計など多様な資料を用いた出題がみられたが、教科書などで扱われていない初見の資料であっても、そこから得られる情報と授業などで学んだ知識を関連づけることで正解できる問題となっている。全体としては、受験生の歴史事象に対する理解の質や思考力・判断力を幅広く問う配慮がなされている。出題分野では、外交・文化からの出題が増加し、政治からの出題が減少した。時代では、高度成長終焉後が昨年に引き続き扱われなかった。
2024年度フレーム(大問構成)
大問 | 分野 | 配点 | マーク数 |
1 | 印刷の歴史 | 18 | 6 |
2 | 日本古代の食物 | 16 | 5 |
3 | 中世社会の特色 | 16 | 5 |
4 | 近世の輸出入品と社会・経済との関係 | 16 | 5 |
5 | 「明治はじめて物語」(洋服・銀行) | 12 | 4 |
6 | 第一次・第二次世界大戦後の日本と国際社会 | 22 | 7 |
合計 | 100 | 32 |
2023年度フレーム
大問 | 分野 | 配点 | マーク数 |
1 | 地図から考える日本の歴史 | 18 | 6 |
2 | 古代の陰陽道の歴史 | 16 | 5 |
3 | 中世の京都 | 16 | 5 |
4 | 江戸時代における人々の結びつき | 16 | 5 |
5 | 幕末から明治にかけての日本 | 12 | 4 |
6 | 近現代の「旅」の歴史 | 22 | 7 |
合計 | 100 | 32 |
設問別分析
第1問
印刷の歴史をテーマとする文章を素材に、古代から近代までを総合的に問うている。共通テストの本試験としては初めて会話文以外からの出題となった。問1は、下線部の「兵乱」が藤原仲麻呂の乱のことであると判断して解答したい。問2の年代配列問題は、I〜IIIの内容から具体的な歴史名辞を想起したい。問3は、Xについては六角氏が美濃国・近江国における座の特権を保護している点、Yについては「諸役あるべからず」が税の免除をさす点を、注も参照しつつ慎重に読み取りたい。
第2問
日本古代の食物に関する高校生の会話文を素材に、古代を総合的に問うている。問2は、史料と表の内容を対照しつつ、解答する必要がある。問4は、会話文中の『延喜式』の規定に関する部分に着目しつつ、写真4・史料2の内容を読解して正誤を判断することが求められており、受験生は解答に手間取っただろう。問5の空欄イは、『日本三代実録』が完成したのは10世紀初頭の醍醐天皇の時代であり、dにみえる藤原陳忠や「尾張国郡司百姓等解文」で訴えられた藤原元命のような貪欲な受領が増加するのは10世紀後半以降であると判断して解答したい。
第3問
中世社会の特色に関する高校生の会話文を素材に、中世の政治・社会を中心に問うている。問2のc・dは、史料2を慎重に読解し、御家人ではない下久世荘の名主・百姓が、御家人が「売主」の場合を対象としている永仁の徳政令の適用を求めている点から判断したい。問4は、史料4については「他国より嫁をとり」「婿にとり、娘をつかわす」とどうなるのか、史料5については「喧嘩」とはどういう行為なのかを考え、それぞれX・Yに該当すると判断したい。問5は、設問文の「実力を行使して問題を解決」という部分に着目して選択肢を吟味したい。
第4問
近世の輸出入品と社会・経済との関係に関する高校生の会話文を素材に、近世の外交を中心に問うている。問2は、IとIIIの前後関係の判定が難しく、受験生は苦戦しただろう。問3のXは、18世紀初頭の海舶互市新例が金・銀流出防止のために長崎貿易を制限したことを想起し、「17世紀末に中国からの来航船が減り、貿易額も減少した」という箇所を誤りと判断したい。問4は、史料1の内容が読み取りにくいうえ、選択肢も正誤の判断が難しいため、受験生は解答に苦労しただろう。
第5問
日本史探究部の高校生が作成した発表原稿を素材に、幕末から明治時代を総合的に問うている。問1のイは、空欄の前にある永井荷風の文章をヒントに解答したい。問2のYは、1866年の改税約書によって関税率が引き下げられ輸入が増加したことを知らなくても、一般論として関税率が引き上げられると輸入には不利になる点から誤文と判断できる。問3の選択肢3・4は、史料から三井組・小野組による出資が第一国立銀行の前提となったこと、および金禄公債証書をもとに国立銀行が設立されたことを読み取って解答したい。
第6問
二度の世界大戦後の日本と国際社会の関係に関する高校生の発表準備を素材に、近現代を総合的に問うている。問1は、Xについては、史料3の「主力艦」からワシントン海軍軍縮条約と判断したい。Yについては、「ワシントン会議で廃棄された条約」から日英同盟協約と石井・ランシング協定を想起したうえで史料を吟味したい。問6の年代配列問題は、条約の内容に関する正確な知識が必要とされ、戸惑った受験生もいただろう。
23年度 | 22年度 | 21年度 | 20年度 | 19年度 |
59.8 | 52.8 | 64.3 | 65.5 | 63.5 |