国語 [分析] 2024年度大学入学共通テスト速報 | 大学入試解答速報
全体としてオーソドックスな出題であった。
<現代文>第1問は、2つの評論文からの出題だった昨年・一昨年とは異なり、1つの評論文からの出題だった。第2問は小説からの出題。2017年に発表された現代小説が用いられている。昨年・一昨年には出題されていなかった知識問題(語句の意味を問う問題)が復活している。
<古文>例年続いた複数の古文を並べて読む形式でなく、本文の表現を解説する現代語の文章を読み、その中の空欄を埋める設問が課された。
<漢文>2021年度・2022年度と出題されていた漢詩が、再び出題された。
難易度
易化
<現代文>第1問は、文章Iと文章IIという2つの評論文からの出題だった昨年と異なり、1つの評論文からの出題だった。問6で本文を読んだ生徒の書いた文章を推敲(すいこう)する問題が出題されたが、生徒の書いた文章に即して答える問題だったため、2つの評論文を関連づけて答える問題が出題された昨年よりは取り組みやすかっただろう。第2問は、昨年に比べると選択肢の正誤の根拠がわかりやすく、解答する際に迷う問題が少なかったと思われる。
<古文>本文は平安時代の物語を模した文章であったが、江戸時代の作品ということもあって、文章自体はそれほど難しくなく、設問・選択肢についても紛らわしいものはなかった。さらに、例年続いた複数の古文を並べて読む形式でなかったので、古文を読解する負担が減り、解きやすかったと思われる。
<漢文>本文は読み取りやすいが、内容説明の問題の選択肢が紛らわしい。
出題分量
<現代文>第1問は、本文と問6の文章をあわせて約4400字であり、昨年よりも1000字近く長い。第2問は、本文と資料との総文字数が約3400字。4000字以上あった昨年に比べると短くなっている。マーク数は増えているものの、問1は知識問題なので、受験生の負担はやや軽くなったであろうと推測される。
<古文>昨年は1319字であったが、今回は1147字で172字減った。設問数・マーク数は昨年と同じ。
<漢文>【詩】31字、【資料】157字、合計188字であり、昨年から4字減少。設問数は6、マーク数は8であり、昨年と比べて設問数・マーク数とも1つずつ減少した。
出題傾向分析
<現代文>第1問は、文章Iと文章IIという2つの評論文を読んで答える昨年・一昨年とは異なり、1つの評論文からの出題であった。問1の漢字の問題は、昨年・一昨年に出題された漢字の意味を問う設問が出題されず、傍線部と同じ漢字を選ぶ従来型の設問だけが出題された。問1〜問5はセンター試験第1問と類似したタイプの設問である。問6は本文を読んだ生徒が「自身の経験」を基に書いた文章について問う設問であるが、本文との関連が直接問われたものではない。第2問では、問1で語句の意味を問う知識問題の出題が復活しており、問6では、かつてセンター試験時代にしばしば見られた、本文中に見られるさまざまな表現の効果などを問う問題が出題されている。全体的には、昨年・一昨年と比べると素直な出題であり、正解が選びやすくなったという印象を受ける。
<古文>「車中雪」という題で創作された江戸時代の擬古物語であった(天野政徳『草縁集』所収)。主人公が従者とともに、桂(京都市西京区の地名)にある別邸に向かう場面と、別邸に着いたところが書かれていた。本文中に和歌が三首あり、すべて設問に関わっていた。問3では、本文中の和歌二首について修辞を含めた内容が問題になり、問4では、問3で問われなかった一首の内容が問題になっていた。例年問4は、共通テストの特徴である複数テクストを読む形式であったが、今年は、本文の表現を解説する現代語の文章を読み、その中の三箇所の空欄を埋める設問が課されていた。
<漢文>玄宗が楊貴妃のために茘枝(れいし)を献上させた故事にまつわる杜牧の【詩】と、【資料】として【詩】に関連する4つの文章が提示され、「玄宗の楊貴妃への情愛」が主題であった。基礎知識だけで正解できる問題が昨年よりも増加した一方で、内容説明の問題は選択肢の説明が長く、正誤判断が容易ではない。
2024年度フレーム(大問構成)
大問 | 分野 | 問数 | マーク数 | 出典 |
1 | 論理的文章 | 6 | 12 | 渡辺裕 『サウンドとメディアの文化資源学ー境界線上の音楽』 |
2 | 文学的文章 | 7 | 10 | 牧田真有子 「桟橋」 資料 太田省吾 「自然と工作ー現在的断章」 |
3 | 古文 | 4 | 8 | 「車中雪」(『草縁集』所収) |
4 | 漢文 | 6 | 8 | 詩 杜牧 「華清宮」 資料I〜III 蔡正孫 『詩林広記』 資料IV 程大昌 『考古編』 |
合計 | 38 |
2023年度フレーム
大問 | 分野 | 問数 | マーク数 | 出典 |
1 | 論理的文章 | 6 | 12 | 文章I 柏木博 『視覚の生命力−イメージの復権』 文章II 呉谷充利 『ル・コルビュジエと近代絵画−二〇世紀モダニズムの道程』 |
2 | 文学的文章 | 7 | 8 | 梅崎春生 「飢えの季節」 資料 一九四五年九月発行の雑誌に掲載された広告 |
3 | 古文 | 4 | 8 | 『俊頼髄脳』 『散木奇歌集』 |
4 | 漢文 | 7 | 9 | 白居易 『白氏文集』 |
合計 | 37 |
設問別分析
第1問
問1の漢字の問題は、昨年・一昨年に出題された漢字の意味を問う設問が出題されず、傍線部と同じ漢字を選ぶ従来型の設問だけが出題された。問2〜問4は本文中の傍線部について本文に基づいた理解を問う設問である。問5は本文の構成と展開について問う設問。問6は本文を読んだ生徒が「自身の経験」に基づいて書いた文章について問うという、従来本試験では見られなかった設問が出題された。(i)は文章の傍線部を具体的な表現に修正するもの。(ii)は加筆する一文を挿入する箇所を選ぶもの。(iii)は最終段落に書き加える結論を選ぶもの。いずれも本文との関連が直接問われたものではなく、生徒の書いた文章の内容や文脈を正確に把握する必要がある。
第2問
問1(語句の意味を問う知識問題)は、比較的易しい出題。問2以降の読解問題もおおむね素直な出題だが、問5・問6は解答を選ぶのに迷った受験生も少なくなかったと思われる。
第3問
問1は、短い語句の解釈問題で、基本的な古語の意味や文脈理解が問われた。問2は、語句と表現に関する説明問題で、共通テスト初年度から続く新傾向の形式が定着したと思われる。昨年同様、文法色が濃くなっていた。問3は、本文中の二首の和歌について、掛詞や和歌の内容が問われた。問4は、一昨年・昨年と続いた教師と生徒の話し合いの場面での空欄補充の問題でなく、本文中の「桂」という言葉に注目して本文を解説した現代語の文章の空欄を三箇所埋める問題であった。空欄Iは、本文の12行目の和歌の下の句の内容を答える問い、空欄IIは、「桂」が「月」を連想させる言葉であることを前提に本文20〜22行目に書かれている情景を答える問い、空欄IIIは、25行目の「桂風を引き歩く」の解説を読んで、23〜26行目に描かれている主人公の人間性を答える問いであった。
第4問
玄宗が楊貴妃のために茘枝を献上させた故事にまつわる杜牧の【詩】と、【詩】に関連する4つの文章からなる【資料】が本文として提示され、「玄宗の楊貴妃への情愛」が主題であった。昨年よりも漢文の基礎知識だけで正解できる問題が増加した。問1は漢詩の押韻と形式の問題、問2は語句の意味の問題で、どちらも知識で正解できる。問3は返り点の付け方と書き下し文の問題で、「有」「所」の用法がポイントであった。問4の解釈の問題は、【資料】と(注)の説明を参考に詩句の意味をつかむ必要がある。問5の【資料】の内容を問う問題と問6の【詩】の鑑賞の問題は、【詩】と【資料】の記述と各選択肢の説明を慎重に照合させることが求められるが、選択肢が紛らわしく、容易には正解できない。
23年度 | 22年度 | 21年度 | 20年度 | 19年度 |
105.7 | 110.3 | 117.5 | 119.3 | 121.6 |