国語 [分析] 2025年度大学入学共通テスト速報 | 大学入試解答速報
選択肢の数がおおむね4つに。第1問、第2問は1つの文章からの出題。
第3問が現代文に追加されたことによる受験生の負担を軽減するためか、選択肢数を減らすなどによって国語全体としてバランスを取った形跡がみられる。
<現代文>第1問は文章Iと文章IIという二つの評論文からの出題だった一昨年や、問6に生徒の書いた文章を推敲(すいこう)する問題が出題された昨年と違い、すべての設問が一つの評論文からの出題だった。第2問は小説からの出題。昨年に続き、近年発表された現代小説が用いられている。複数テクストでの出題ではなくなり、昨年復活した語句の意味を問う知識問題も出題されなかった。第3問は今年から新たに出題された、グラフなどを用いた問題。試作問題(2022年に大学入試センターが発表)の「第B問」に似たところがある。
<古文>設問数・マーク数・選択肢の数が減少した。設問数は、24年度が問1〜4で、25年度が問1〜3と1問減少した。マーク数は24年度が8で、そのうち選択肢が五択のものが5、四択のものが3であったが、25年度はマーク数が7と一つ減少し、そのうち選択肢が五択のものが1と大きく減少し、四択のものが6と増加した。
<漢文>出題頻度の高かった漢詩は出題されず、二つの本文とも日本漢文からの出題であった。
難易度
昨年並み
<現代文>第1問は、すべての設問が一つの評論文からの出題だった。マーク数が2つ減り、選択肢もすべて四択になったことで、全体として昨年よりやや取り組みやすかっただろう。第2問は、問7を除き選択肢が五択だった昨年とは異なり、すべての設問で四択になった。ただし、正解を決めにくい設問が複数あり、必ずしも易しくなったわけではないと思われる。第3問は、試作問題に比べれば情報が整理されており、受験生にはやや解きやすい問題であったと思われる。
<古文>【文章I】は平安時代の物語を模した文章で、【文章II】は平安時代の文章だったので、本文の読解は難しいが、リード文と選択肢から本文の内容がある程度類推でき、さらに、設問数・マーク数・選択肢の数が減ったことにより、昨年より解きやすくなったのではないかと思われる。
<漢文>すべての設問が四択になり、説明問題についての選択肢で紛らわしいものが減った。
出題分量
<現代文>第1問は、本文字数が約3800字であり、本文と問6の文章を合わせて約4400字だった昨年より短くなった。第2問は、本文字数が約4300字。本文と資料をあわせた文字数が約3400字だった昨年と比べて約900字増加した。複数テクストでの出題ではなくなり、選択肢も四択になったものの、語句の意味を問う知識問題が出題されず、問7までのすべての設問が本文の内容や表現の効果を問う問題であったということもあり、受験生の負担が軽減されたとは言えないだろう。第3問は、試作問題と比べた場合、設問数(マーク数)は変わっていないが、一つ一つの設問は、受験生にさほど負担を感じさせないものになっていると思われる。
<古文>昨年は1147字であったが、今回は【文章I】は634字、【文章II】は426字、合計1060字で87字減った。
<漢文>【文章I】107字、【文章II】92字、合計199字であり、昨年から11字増加。設問数は6、マーク数は昨年より1増加して、9であった。
出題傾向分析
<現代文>第1問は、すべての設問が一つの文章からの出題であった。問1は一昨年に出題された漢字の意味を問う設問が出題されず、昨年と同様、傍線部と同じ漢字を選ぶ従来型の設問だけが出題された。全体として、センター試験第1問と類似したタイプの設問である。第2問では、昨年復活した語句の意味を問う知識問題が出題されず、場面ごとの登場人物の心情を細かく問う問題に加えて、本文中にみられるさまざまな表現の効果を問う問題も出題された。複数テクストでの出題ではなくなったが、正解を決めにくい設問が複数あり、難しいと感じた受験生も少なくなかっただろうと推測される。第3問は、外来語の使用をめぐる問題について、複数の資料(生徒が書いたという体裁の文章や、グラフなど)をもとに考察させるというもの。解答を選ぶのにやや迷う設問もあるが、全体としては試作問題と比べれば解きやすい問題であったといえる。ただし、このような出題に慣れていない受験生は、解答に時間を要したのではないかと思われる。
<古文>鎌倉時代の擬古物語(【文章I】『在明(ありあけ)の別(わかれ)』)の一節と、それに影響を与えた物語(【文章II】『源氏物語』若菜下)の一場面から出題された。どちらも男女の三角関係を基底にして、高貴な男性の妻が病になり危篤状態のときに、男性のかつての恋人が物の怪となって現れ、自分のつらい心情を吐露する場面が中心であった。【文章I】と【文章II】の共通点と相違点について読解するところが出題の意図だと思われる。例年通り本文に和歌があり、その内容が問われた。共通テストになって新傾向の設問として定着していた、語句の表現と内容の設問がなく、センター試験によく出題された敬語の種類と敬意の方向を聞く、敬語単独の設問が出題された。問3は、共通テストの特徴である複数テクストを読む形式で、生徒の話し合いが設定され、その中の三箇所の空欄を埋める設問が課された。
<漢文>江戸時代の二人の漢学者の評論が出題され、主題は「学問論」であった。基礎知識だけで正解できる問題が昨年よりも減少した一方で、説明問題は紛らわしい選択肢が少なく、正誤判定が容易であった。
2025年度フレーム(大問構成)
大問 | 分野 | 問数 | マーク数 | 出典 |
1 | 論理的文章 | 6 | 10 | 高岡文章「観光は『見る』ことである/ない――『観光のまなざし』をめぐって」 |
2 | 文学的文章 | 7 | 7 | 蜂飼耳「繭の遊戯」 |
3 | 図表・資料 | 3 | 5 | 外来語の使用をめぐる提言に関する問題(以下の資料を使用) ・生徒の書いたとする文章 ・図1〜3(国立国語研究所『外来語に関する意識調査(全国調査)』をもとにしたもの) ・用語解説(国立国語研究所「外来語」委員会編『分かりやすく伝える外来語言い換え手引き』をもとにしたもの) ・図とそれについての「メモ」(NHK放送文化研究所『放送研究と調査』2022年12月号をもとにしたもの) |
4 | 古文 | 3 | 7 | 【文章I】『在明の別』 【文章II】『源氏物語』若菜下の巻 |
5 | 漢文 | 6 | 9 | 【文章I】皆川淇園『論語繹解』 【文章II】田中履堂『学資談』 |
合計 | 38 |
2024年度フレーム
大問 | 分野 | 問数 | マーク数 | 出典 |
1 | 論理的文章 | 6 | 12 | 渡辺裕 『サウンドとメディアの文化資源学ー境界線上の音楽』 |
2 | 文学的文章 | 7 | 10 | 牧田真有子 「桟橋」 資料 太田省吾 「自然と工作ー現在的断章」 |
3 | 古文 | 4 | 8 | 「車中雪」(『草縁集』所収) |
4 | 漢文 | 6 | 8 | 詩 杜牧 「華清宮」 資料I〜III 蔡正孫 『詩林広記』 資料IV 程大昌 『考古編』 |
合計 | 38 |
設問別分析
第1問
問1の漢字問題は、昨年同様、傍線部と同じ漢字を選ぶ従来型の設問だけが出題された。問2以降の設問は、すべて本文中の傍線部についての説明を求めるものであった。解答の根拠を本文から正しく読み取り、選択肢を的確に判断することが重要である。
第2問
問2、問4、問6、問7は「わたし」の心情や心境を問う問題。問1、問3は他の登場人物のありようについての問題。問5は本文における表現に関する問題。問5や問6のように正解の根拠がわかりやすい設問があった一方で、問7のように設問の意図自体がわかりにくい設問もあった。設問の意図を正確に読み取り、選択肢を本文内容と照らし合わせて、迅速かつ的確に吟味する練習を重ねることが重要である。
第3問
第3問は2022年に大学入試センターが発表した試作問題のうち、Bの問題に類似したところがある。外来語の使用をめぐる問題について、複数の資料(生徒が書いたという体裁の文章や、グラフなど)をもとに考察させるというもの。用いられている文章や資料の著者が曖昧であるという点で、一般的な「現代文」の入試問題とは異なる。問3(i)など解答を選ぶのにやや迷う設問もあるが、全体に試作問題と比べれば情報が整理されており、受験生に大きな負担を与えるような問題ではないと考えられる。
第4問
問1は、短い語句の解釈問題で、基本的な古語の意味が問われた(選択肢四択)。問2は敬語の種類と敬意の方向が問われたが、敬語の種類だけで正解が選べるものになっていた(選択肢五択)。最後の設問は、例年三箇所の空欄補充の問題が出題されており、今年も同様であった。昨年の問4は、本文中の一語に注目して本文を解説した現代語の文章の空欄を埋める問題であったが、今年の問3は、一昨年の問4と同じように生徒の話し合いの場面での空欄補充の問題であった。(i)は、【文章II】の物の怪が言った内容(選択肢四択)、(ii)は、【文章I】の物の怪が詠んだ和歌の内容(選択肢四択)、(iii)は、【文章I】の和歌の前後の内容(選択肢四択)の三点が問われた。
第5問
江戸時代の二人の漢学者の評論が出題され、主題は「学問論」であった。基礎知識だけで正解できる問題が昨年よりも減少した。問1は語句の意味の問題で、文意にふさわしい意味を判断する。問2は理由説明の問題で、傍線部直前の「是故」に注目したい。問3は解釈の問題で、比較形の構造を正しく捉える。問4は返り点の付け方と書き下し文の問題であった。否定詞「莫」の意味がどこまでかかるかを、文脈を踏まえて考える必要がある。問5は「また」と読む語の意味の相違に注意する。問6は趣旨説明の問題で、各文章の結論部分を正しく捉える。
- 随時、更新します。
過去の平均点の推移
今年度の予想平均点速報は1/19(日)夜公開します。
24年度 | 23年度 | 22年度 | 21年度 | 20年度 |
116.5 | 105.7 | 110.3 | 117.5 | 119.3 |