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国語 [分析] 2021年度大学入学共通テスト速報 | 大学入試解答速報

様々な変化が予想されたが、センター試験からの変化は大きくなかった。

<現代文>試行調査を踏まえた場合、第1問では実用的文章、第2問では韻文およびエッセイの出題も予想されたが、結果的にはセンター試験をほぼ踏襲したかたちの出題となった。第1問は、妖怪観の歴史的変容について論じた評論からの出題、第2問は、大正期の小説を使った出題であった。
<古文>設問全体にわたって二回目(2018年実施)の試行調査を踏まえた形式であった。
<漢文>【問題文I】も【問題文II】も、どちらも本文は漢文であった。

難易度

<現代文>第1問は、標準的な難易度の評論からの出題。第2問は古い時代の小説ではあるものの、センター試験から出題されてきた同種の作品に比べれば読みやすく、設問もおおむね素直ではある。
<古文>和歌が五首出題されており、そのうち四首が設問に関わっていることや、設問も難しく、選択肢も紛らわしいものがあったため、やや難しい。
<漢文>複数の問題文が提示され、双方の問題文にかかわる問題が二題設けられたことや、意味を捉えにくい語句が扱われたので、やや難と言える。

出題分量

<現代文>第1問の本文分量は、3000字程度で昨年とほぼ同じ。ただし、問5の設問に600字を超える文章が取り上げられている。マーク数は12で昨年より1つ増えた。第2問は、本文分量は約4400字で昨年よりやや減少しているが、問6の設問に500字程度の文章が取り上げられている。マーク数は昨年と変わっていない。
<古文>センター試験の本文の長さは、1200字〜1700字ほどであるが、今回の共通テストは本文917字、設問に引用された和歌が28字で、合計945字と、昨年の1279字から334字減少した。設問は問5までと昨年のセンター試験より一問少なかったがマーク数は8と同じであった。
<漢文>【問題文I】が110字、【問題文II】が66字、合計176字であり、昨年から76字増加。設問数は6であり、昨年と比べて増減なし。マーク数は9であり、昨年から二つ増えた。

出題傾向分析

<現代文> 第1問は、おおむねセンター試験を踏襲しているが、問5は「学習の過程を意識した問題の場面設定を重視する」という共通テストの問題作成方針を踏まえた新傾向の設問が出題された。センター試験では問6までの出題だったが、問5までとなり、問5は(i)〜(iii)の小問に分かれている。第2問は、センター試験を踏襲した出題。ただし、問6は新傾向である。
<古文>平安時代に書かれた歴史物語『栄花物語』からの出題であった。本文は、妻を亡くした藤原長家やその親族らが葬送のために亡骸を寺に移す場面と、その寺に籠もっている間の、長家と親しい人たちとの和歌の贈答、長家の亡き妻への追悼の思いなどで構成されている。センター試験と同じように和歌が出題されており、本文に四首、別に設問に一首引用され、そのうち四首が設問に関わっていた。
<漢文>宋の欧陽脩の漢詩(五言古詩)と『韓非子』から散文が出題され、馬車を操縦する「御術」が共通の主題であった。複数の問題文が提示されたこと、問3と問6のように双方の問題文の検討を要求する問題が設けられたことは、「複数の題材による問題」「多面的・多角的な視点」という共通テストの出題方針に沿った出題である。問3と問6は新傾向と言えるが、それ以外はセンター試験の出題と本質的には変わらない。

2021年度フレーム(大問構成)

大問 分野 問数 マーク数 出典
1 論理的文章 5 12 香川雅信『江戸の妖怪革命』
2 文学的文章 6 9 加能作次郎「羽織と時計」
資料 宮島新三郎「師走文壇の一瞥」
3 古文 5 8 『栄花物語』
4 漢文 6 9 問題文I 欧陽脩『欧陽文忠公集』
問題文II 『韓非子』
合計   38  

2020年度フレーム

大問 分野 問数 マーク数 出典
1 評論 6 11 河野哲也『境界の現象学』
2 小説 6 9 原民喜「翳」
3 古文 6 8 『小夜衣』
4 漢文 6 7 『文選』
合計   35  

設問別分析

第1問

問1の漢字の設問は、選択肢が5択から4択になった。問2〜4は、傍線部の内容について本文に基づいた理解を問う、センター試験を踏襲した設問である。問5は、新傾向の設問で、「文章を授業で読んだNさん」が内容をよく理解するために作成した【ノート】の空欄を補うものであった。3つ示された【ノート】のうち1つに、出典である『江戸の妖怪革命』の別の箇所で取り上げられている、芥川龍之介の小説「歯車」が引用され、複数のテクストを踏まえて答える設問になっている。

第2問

問6が新傾向。出典となった小説が発表された当時の批評文(その小説の瑕疵を指摘した文章)を提示し、(i)ではそれに即した内容を問い、(ii)ではそれとは「異なる」内容を問うというかたちになっている。しかし(ii)の出題の意図はわかりにくく、とまどった受験生も少なくないと思われる。また問1の(ウ)および問3も、受験生にとっては自信をもって正解を選ぶことが難しかったかもしれない。選択肢同士を比較検討しつつ慎重に解答を選ぶことを心がけよう。

第3問

二回目の試行調査と一致する点が多かった。特に設問の形式は非常によく一致していた。問1は短い語句の解釈問題で、試行調査でも出題されたが、センター試験の問1と同じ形式であった。問3の語句の表現に関する説明問題は、傍線部についての、文法や語句の意味、内容に関わる設問で、試行調査と形式的に同じである。問4の登場人物についての説明問題は、これまでのセンター試験でもみられたが、試行調査と形式的に同じである。問5は、本文に二組の贈答歌があるが、そのうちの一方の返歌が『千載和歌集』では同じ状況で詠まれた別の歌になっており、その歌を設問に引用して本文の和歌との比較を問うている。この設問は共通テストの「異なる種類や分野の文章などを組み合わせた、複数の題材による問題を含めて検討する」という方針に沿った出題で、試行調査と同じであった。ただし、試行調査では、「授業において生徒が学習する場面……を重視する」という方針に沿って生徒と教師の話し合いの場面が設定されていたが、今回の設問はその形式になっていなかった。

第4問

二つの問題文が提示され、馬車を操縦する「御術」という共通の主題を踏まえて解答することが求められており、「多面的・多角的に考察する」という問題作成方針に従っている。問1の語の意味の問題は、実質的には語の読み方の問題である。問2は解釈の問題であったが、(1)は詠嘆形を捉えること、(3)は文脈を踏まえて「至」の意味を考える必要がある。問3は【問題文I】についての押韻の問題であるが、【問題文II】の内容も確認して選択しなければならない。問5は傍線部の前半と後半の対句に気づくことがポイントである。問6は二つの問題文のいずれかの内容を正しく読み取れていれば正解できる。

過去の平均点の推移

20年度 19年度 18年度 17年度 16年度
119.3 121.6 104.7 107.0 129.4