河合塾
2013年度大学入試センター試験 分析
【国語】
〈現代文〉第1問(評論)は、随筆風の文章からの出題で、鐔という具体的な事物がもつ魅力について語りながら、そこから浮かび上がる人間や文化のありようを通念にとらわれることなく感得しようとしたもの。これまで比較的新しい評論からの出題が中心であったため、本年度のようなやや古めの随筆風の文章に戸惑いを感じた受験生もいたであろう。なお、問6は2011・2010・2008年度の出題のように小問2題で構成されており、昨年出題された論の展開を大きく問うものではなく、本文の表現と構成が問われた。
第2問(小説)は、牧野信一が大正時代に発表した短編小説。小説中に主人公の「私」が書いた物語が挿入されるという複雑な構成となっているため、受験生にとっては読みにくかったと思われる。
〈古文〉本文は中世の擬古物語で文体が難しく、人物の動きが複雑で読み取りにくかった。
〈漢文〉問8まで設問が立てられたのは、センター試験本試験で初めてである。
難易度 難化
〈現代文〉第1問(評論)は、すでにふれたように本文の文体に戸惑った受験生も多かったであろうが、設問は比較的わかりやすく作られているため、全体としての難易度は昨年並み。
第2問(小説)は、本文が長く、構成が複雑で読解に時間がかかるうえ、問4・問5ではやや踏み込んだ解釈が要求されているため、全体としては昨年に比べ難化した。
〈古文〉本文は平安時代の文章を模した文体で、受験生にとっては読みづらいものであり、設問の中には正解を選びにくいものもあるため、全体的には難化した。
〈漢文〉本文の分量は減少したが、心情や心境を問う設問は、本文中に明確な根拠を探しにくく取り組みにくいもので、昨年より難化した。
出題分量
第1問(評論)は、昨年度と比べ600字程度増加した。設問数は昨年と変わっていないが、マーク数は1増加した。第2問(小説)は、本文量は約350字ほど増加。設問数・マーク数は昨年と変わっていない。第3問(古文)の本文は50字ほどの増加。設問数・マーク数は昨年と同じ。第4問(漢文)は、本文量が198字で17字減少。設問数は昨年より1問増加。マーク数は昨年と同じ。
出題傾向分析
〈現代文〉第1問(評論)は、現在活躍している筆者の評論から出題されることが多かったが、本年度は昭和を代表する批評家の随筆風の文章からの出題であった。ただし、設問の出題形式はこれまでの傾向を踏襲している。第2問(小説)は、やや踏み込んだ解釈が要求されているが、消去法を用いれば正解は得られるだろう。
〈古文〉中世の擬古物語からの出題。本文は、東国に下った右衛門督と下総守の娘が、契りを結んだ翌朝、後朝(きぬぎぬ)の文を交わす場面である。二人のやりとりが、手紙の使いをさせられる弟君や二人の関係に敏感に気づいた母君や侍女の様子を交えながら描かれている。昨年と同様、本文に和歌が三首あり、それぞれの和歌の内容が問われた。文章全体の表現と内容に関する設問が3年連続して出題された。
〈漢文〉筆者が自分の手で植えた海棠(かいどう)が世の中の出来事に関わりなく、春になって前年と同じく花を咲かせたことを知り、突然左遷された自分の境遇について思いをめぐらせた文章。前半の事実内容の推移は比較的追いかけやすいが、筆者が運命を大局的に捉えようとする後半の内容は、読み取りが難しい。全体の話の流れを正しく捉えられるかどうかがポイントである。
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