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化学 [分析] 2020年度大学入試センター試験速報 | 大学入試解答速報

情報を読み取り、複数の段階にわたって判断する化学的な思考力を問う問題が出題された。

「化学」からの出題が大部分を占め、「化学基礎」からの出題はわずかであった。

難易度

昨年並み

昨年と同様、複数の思考過程を要する計算問題や、やや難易度の高い正誤問題が出題された。全体的には昨年並みであった。

出題分量

小問数は25問、マーク数は32であった。昨年は小問数25問、マーク数29であり、マーク数はやや増加したが、小問数は変わらず、分量は昨年とほぼ同じである。

出題傾向分析

第1問が物質の構成、物質の状態、第2問が物質の変化と平衡で、いずれも理論分野からの出題、第3問は無機物質、電池、第4問は有機化合物、第5問から第7問は合成高分子化合物、天然有機化合物からの出題で、全体の構成は昨年と変わらなかった。教科書に記載されている基本事項に関する設問が中心であるが、第1問問5、第2問問1、問3、問5、第3問問5、第6問問2、第7問問2は思考力を要する計算問題であった。また、第2問問1、問3はグラフから必要なデータを読み取る力が要求され、特に問3では大学入学共通テストのための試行調査で出題された対数目盛りのグラフが出題された。例年同様、実験に関する問題も出題された。

2020年度フレーム(大問構成)

大問 分野 配点 マーク数 テーマ
1 物質の構成、物質の状態 24 6 物質の構成、物質の状態、気体、溶液、コロイド
2 物質の変化と平衡 24 7 化学反応と熱、反応速度、化学平衡、電離平衡
3 無機物質 23 8 金属元素、非金属元素、電池
4 有機化合物 19 6 脂肪族化合物、芳香族化合物
5 合成高分子化合物、天然有機化合物 6 3 合成高分子化合物、天然有機化合物
6 合成高分子化合物 4 2 合成高分子化合物
7 天然有機化合物 4 2 天然有機化合物
合計 100 32  

2019年度フレーム

大問 分野 配点 マーク数 テーマ
1 物質の構成、物質の状態 24 7 物質の構成、物質の状態、気体、溶液
2 物質の変化と平衡 24 6 化学反応と熱、反応速度と化学平衡、溶解度積、電気分解
3 無機物質 23 6 非金属元素、金属元素、化学反応と量的関係
4 有機化合物 19 6 脂肪族化合物、芳香族化合物
5 高分子化合物 5 2 合成高分子化合物、天然高分子化合物
6 合成高分子化合物 5 2 合成高分子化合物
7 天然有機化合物 5 2 糖類、ペプチド
合計 100 29  

設問別分析

第1問

物質の構成、状態変化、混合気体の密度、飽和蒸気圧、浸透圧、コロイドが出題された。
問1はハロゲンに関する原子の性質、単体の物理的・化学的性質に関する問題であった。問2は状態図を用いた物質の状態変化を考える問題で、状態図に関する基本的な知識があれば解答できる。問3は混合気体の平均分子量を求め、状態方程式から混合気体の密度を表す式を求める問題であった。問4は水銀柱を用いて飽和蒸気圧を求める問題であった。問5はファントホッフの法則から非電解質のモル質量を求める問題であった。ピストン内の気体の圧力と大気圧の差が浸透圧に相当することに気づく必要があった。問6はコロイドに関する正誤問題で、基本的な知識があれば解ける。

第2問

化学反応と熱、反応速度、化学平衡、電離平衡が出題された。
問1はスチールウールの燃焼を題材に、反応量から生成物の化学式を判断し、その生成熱を水の温度上昇から求める問題であった。aを間違えると、bも連動して間違える問題であり、過去のセンター試験ではほとんど見られなかった形式である。問2は生成熱から反応熱を求める基本的な問題であった。問3は反応速度式の反応次数を、与えられた2つのグラフの読み取りにより判断し、濃度変化による反応速度の変化を求める問題であった。与えられたグラフの両軸の目盛りが対数であった点が目新しい。なお、対数目盛りのグラフは大学入学共通テストのための試行調査で出題されていた。問4は可逆反応の生成物の生成量の時間変化についての問題で、反応条件の変化による反応速度の増減と平衡が移動する方向を考える内容であった。問5は指示薬の電離平衡と滴定曲線の融合問題で、電離定数の値から指示薬の変色域を判断することがポイントであった。
多くの受験生にとって見慣れない題材もあり、思考力が重視された。

第3問

無機物質の性質とその利用、酸化物、金属イオンの分離、カルシウムとその化合物、ニッケル水素電池に関する計算問題が出題された。
問1は無機物質の性質とその利用に関する問題で、ニクロムがヘアドライヤーに用いられているという内容から、二クロムの電気抵抗が大きいと判断できれば解答できる。問2は様々な酸化物の生成や性質に関する内容であった。問3は金属イオンの分離に関して、操作および分離結果を問う内容であった。問4はカルシウムの単体および化合物の反応や性質に関する知識が総合的に問われた。問5はニッケル水素電池に関する計算問題で、酸化数の変化から移動した電子の量を判断することがポイントである。また、電気量の単位が見慣れないものであり、戸惑った受験生もいたと思われる。

第4問

脂肪族炭化水素、酸素を含む脂肪族化合物、芳香族化合物からまんべんなく出題された。
問1は炭化水素に関する正誤問題であった。問2は分子式中の水素原子の数を決定する問題で、分子式C9HnO2で表される化合物と完全燃焼で生じる水の物質量の比に着目できれば、容易に解答できる。問3は同じモル濃度の芳香族化合物の水溶液について酸性の強さを比較する基本問題であった。問4は分子式から鏡像異性体(光学異性体)が存在する化合物を選択する問題で、あまり見かけないタイプの問題であった。問5は酢酸エチルの合成を題材とした問題で、酸素の同位体を用いてエステル化の反応のしくみを調べる実験が出題された点は目新しかった。
有機化合物の名称や性質など、教科書の重要事項を身につけ、計算問題や実験問題への対策を講じていれば、十分に高得点を取れたであろう。

第5問

合成高分子化合物、アミノ酸が出題された。
問1はナイロン66、合成ゴム(SBR)の原料が問われた。教科書に記載されている基本事項が押さえられていれば解ける。問2はアミノ酸の等電点とpHからアミノ酸の電荷の状態が判断できるかがポイントであった。

第6問

合成高分子化合物が出題された。
問1は合成高分子化合物に関する正誤問題で、正確な知識が要求された。問2は共重合による合成高分子化合物の重合度を平均分子量と元素分析の結果から求めるもので、思考力が要求された。

第7問

天然有機化合物が出題された。
問1はタンパク質や核酸の基本的な知識に関する正誤問題であった。問2はデキストリンの加水分解に関する計算問題で、加水分解によって生じるマルトースの物質量が正しく求められたかがポイントであった。

過去の平均点の推移

19年度 18年度 17年度 16年度 15年度
54.7 60.6 51.9 54.5 62.5