2018年度 大学入試センター試験 総合コメント
2018.01.14
1.志願者、受験者数
 今回の大学入試センター試験は、1月13日・14日の両日に、全国695の会場で実施された。参加大学・短大数は昨年と同じく、848校であった。大学入試センター試験志願者確定数は582,671人(昨年575,967人)で、昨年に比べ6,704人(前年比101.2%)増加した。内訳をみると、現役生志願者数が昨年の471,842人から473,570人、既卒生等が昨年の104,125人から109,101人といずれも増加した。
 来春の高校卒業見込者(現高3生)が1,061,885人と前年から約1万4千人減少する(前年比98.7%)一方で、現役生の志願者が前年並みに留まったのは、センター試験の現役志願率(センター試験現役志願者数/高校卒業見込者数)が44.6%(昨年から0.7ポイント上昇)と過去最高を更新したことが要因である。近年は国公立大の推薦・AO入試でセンター試験を利用する大学が増えていることもあり、センター試験を受験する層が拡大しているとみられる。
 既卒者等志願者の増加は、昨年の私立大学で合格者絞込みがあるなど、厳しい入試であった影響である。

 本試験の受験者数は、外国語ベースで548,465人(昨年540,941人)となり、志願者に対する受験率は94.1%(昨年93.9%)であった。
 寒波の到来に伴う交通機関の遅れなどにより、初日の13日は試験開始時間の繰り下げ措置をとる試験会場が相次いだ。科目間で20点以上の平均点差が生じ、これが試験問題の難易差に基づくものと認められる場合に実施される得点調整は、今回実施される可能性が低いと思われる。


2.出題内容
 2017年12月に2021年度入試から導入予定の「大学入学共通テスト」導入に向けた試行調査(2017年11月実施。英語除く)の問題が示された。問題文が長く読解力を要す問題や対話形式での出題、また文章や図表など複数の素材から考えさせる設問が目立つ内容であった。今年のセンター試験においても、そのような内容を意識したと思われる出題が、一部の教科・科目でみられた。

 一例として、
 英語(筆記)では、第2問の対話の流れを読み取る出題の傾向が強まり、また第3問での話し合いの発言内容をまとめる問題などで、より実践的なコミュニケーション能力を問う傾向が強まっている。また国語の第1問(評論)では、本文に示された2つの図(写真)に関連した生徒の話し合いが紹介され、そのうちの一人の発言が空所補充問題として問われたのは新しい傾向である。地学基礎の第3問(宇宙)では、会話形式の問題が昨年に引き続き出題されている。日本史Bでは会話形式の出題として、歴史学科を卒業した観光課の新人職員とその先輩の会話文という設定からの出題がされた。また複数の時代をまたいで総合的に問う問題として第1問では古代〜近代、第3問では地震とその影響を素材に中世〜近世初期までを総合的に問う出題がされており、歴史資料をもとに総合的に考察させようとする出題がみられた。


 各教科・科目の特徴は、以下の通りである。
【英語(筆記)】
 センター試験が始まって以来続いていた対話文完成問題が出題されなかった。一方で、第2問Cの応答文完成問題で、完成させる文の前にある対話文の分量が増え、対話の流れを読み取るという側面が強まっている。第3問Bの、学生たちによる話し合いにおける発言の主旨を選ぶ問題では、発言者の人数がこれまでで最多の7人となった。また、第5問の長文読解問題の本文は、地球と思われる惑星を調査する宇宙人が書いた日誌からの抜粋という昨年に引き続き珍しい内容の文章が出された。全体として、分量に大きな変化はなく、傾向の大幅な変更も見られないが、実践的なコミュニケーション能力を問うという現行課程の方向性をより意識した出題であった。


【英語(リスニング)】
 出題傾向に大きな変化はないが、対話の流れを正確に理解する力と、これまで以上に多様な応答表現の知識が問われるようになった。設問総数と読み上げ文の総語数にほとんど変化はなかった。印刷された質問・選択肢の総語数は昨年より約70語増え、その点では若干負担増であったが、第3問Bの情報の読み取りの負担は若干軽減された。


【数 学】
 「数学T・A」:公式・定理に当てはめて計算するだけでなく、誘導に従った式変形や図の形状を分析するなどその場での対応力を図る問題がいくつか出題されている。「図形と計量」、「図形の性質」では、正しく図を描いて論証の根拠を考察する力が求められた。
 確率は昨年同様に、条件つき確率が複数題出題された。集合と命題は前半の部分は正誤の判定がやや煩雑であった。データの分析はヒストグラム、箱ひげ図、散布図から読み取りをする問題と、共分散の等式に関する計算問題であった。散布図に補助線が描かれていたのは新しい。
 「数学U・B」:全体的に誘導は丁寧であったが、見慣れない設定や題意が把握しづらい問題が多く、計算量も多かった。三角関数の問題では、弧度法の定義を問う問題は目新しい。また微分法と積分法の問題では、面積から関数を決定する目新しい出題があった。平面ベクトルの問題においても、ベクトルの始点が標準的な頂点でない設定は珍しかった。計算も要領よくおこなうことが求められた問題設定であった。典型問題の演習だけでなく、しっかりとした理解と、学習した内容の活用が問われた出題であった。


【国 語】
 第1問(評論)は、さまざまな具体例を挙げながら、現実をデザインするという人間の本質について論じた文章が出題された。本文に示された2つの図(写真)に関連した生徒の話し合いが紹介され、そのうちの一人の発言が空所補充問題として問われたのは新傾向である。第2問(小説)は現代の作家による短編小説の一節からの出題で読みやすい文章であった。第3問(古文)は問答体で書かれた歌論。本試験での歌論の出題は2001年度以来である。話の展開を読み取らせる例年の問題と違い、本文の記述から筆者の主張を把握する力が試されている。第4問(漢文)は、昨年は日本漢文からの出題であったが、南宋の歴史書からの出題であった。内容はやや抽象度が高かったが、本文・設問ともに難易度に変化はなかった。


【理 科】
 「物理基礎」:昨年出題されなかったグラフ選択の問題が再び出題された。知識を問う問題や公式を単純に当てはめる問題が増えた。例年同様に基本的な知識問題、数値計算問題、文字計算問題、定性的に考察する問題がバランスよく出題された。

 「物理」:力学が原子とともに選択問題として出題された。昨年と比べ、マーク数に変化はないものの複数の答えを組み合わせて問う設問が増加した。一見して解答の方針が立てられる問題や、知識だけを問う問題が少なくなり、状況を正確に把握し、式を立てて計算をおこなわないと正解できない問題が増加した。

 「化学基礎」:教科書の全範囲から偏りなく出題された。水の状態変化、物質の用途、身近な物質のpH、電池などが扱われ、これまで以上に化学と人間生活の関係を意識した出題が増加した。知識問題では、基本的な知識の定着度が試された。また計算問題は、教科書の例題で対応可能なレベルの問題が中心に出題された。

 「化学」:化学の全範囲に加えて、化学基礎の内容も出題された。電気伝導度による中和滴定の問題、金属の硫酸塩の化学式の決定、不飽和アルコールの分子式の決定など、目新しい問題や思考力を要する問題も出題された。また例年通り有機化合物の実験問題が出題された。煩雑な計算問題はなく、標準的な難易度の問題が多かった。

 「生物基礎」:生物と遺伝子、生物の体内環境の維持、生物の多様性と生態系の3分野からバランスよく出題されており、各大問がA・B分けされていた。教科書に記載されている知識を問う問題が中心であり、例年出題されている計算問題は出題されなかったが、昨年出題されなかった考察問題が出題された。

 「生物」:問題の文章量が増加し、文章読解力が要求された。問題のページ数や問題文の桁数、図と表の数が増加し、総選択肢数も増加した。解答に時間を要する考察問題もあり難易度はやや高くなった。教科書の各分野から幅広いテーマで出題されていたが、「生態と環境」と「生物の進化と系統」の分野からの出題が多かった。

 「地学基礎」:基本知識、計算力、図表の読解力、思考力を問う問題が地学基礎の各分野からバランスよく出題されている。思考力を問う問題が増加し計算問題は減少した。第2問(大気と海洋)では、随筆を題材として身近な自然現象と地学の知識を考察させる目新しい問題が出題された。また第3問(宇宙)では、会話形式の問題が昨年に引き続き出題された。

 「地学」:固体地球、岩石・鉱物、地質・地史、大気・海洋、宇宙の5分野のすべてから出題された。文選択問題など詳細な知識を要する問題が増加し、語句や数値だけを問うような問題は減少したが、マグマの生成や風にはたらく力など、基本的な内容が多かった。知識問題、読解問題、計算問題がバランスよく出題されている。


【地理歴史】
 「世界史B」:近現代中心の出題は従来通りで、昨年と同様に日本との結びつきをテーマとする設問があった。前近代史の出題割合が増加したが、地図問題は減少した。グラフを読み取る問題は3年連続で出題された。受験生が苦手とする文化史が増えたものの、同じく受験生が苦手とする時代順配列はなくなった。4文字正誤判定のオーソドックスな形式の問題が中心の出題であった。

 「日本史B」:図版を利用した年代配列問題や統計資料を利用した問題は出題されなかった。会話形式の出題として、歴史学科を卒業した観光課の新人職員とその先輩の会話文という設定からの出題がされた。また第1問では古代〜近代、第3問では中世〜近世初期といった複数の時代をまたいで総合的に問う問題が出題されている。文字史料の読み取り問題は増加している。図版や地図を利用した出題傾向は続いており、歴史資料をもとに考察させようとする姿勢は今年も維持されている。

 「地理B」:大問構成、出題分野などに大きな変化はなく、昨年に続いて自然災害と比較地誌が出題された。地理Bのほぼ全分野からまんべんなく出題されている。ムーミンを知らないと解けない問題があるなどインターネット上で話題になったが、ムーミンを知らないことを前提として出題したとみられ、正解を見つけることは可能であった。全体としては基本的な知識を問う問題や、統計表、統計地図、グラフ、地形図などさまざまな図表を用いて、それらの読み取りと基本的知識を結びつけて解答する問題が多い。


【公 民】
 「現代社会」:基本知識を重視する傾向に変化はない。本文の内容の読み取り問題や写真を用いた問題も昨年同様に出題されているが、与えられた条件や具体例に基づいて判断させる問題が増えた。時事的動向を踏まえた問題として、昨年は大阪都構想についての住民投票や日本のTPP署名、2015年に登録された日本の世界遺産などが取り上げられたが、今年は、人工衛星、パリ協定、イギリスのEUからの離脱などが取り上げられた。

 「倫理」:現代思想分野を強く意識した昨年の出題に比べ、倫理で学ぶ基本的な人物や思想を中心とした出題となっている。第3問の資料文読解問題が古文や擬古文でなくなり現代文の読解になっており資料読解問題は全体的に取り組みやすいものであった。

 「政治・経済」:例年と同様に基本事項中心の出題となっている。すべての大問が政治・経済の多様な分野から出題されており、総合問題化の傾向もみられる。需要曲線・供給曲線の問題はほぼ毎年出題されている。ベーシックインカムなど時事的動向を意識した出題がみられた。知識を前提としない図表読み取り問題が出題される一方、日米防衛協力のための指針など、一部に細かい知識を問う問題もあった。

 「倫理、政治・経済」:全設問が「倫理」「政治・経済」単独科目からの転用であった。例年通り、倫理分野、政治・経済分野ともに、概ね教科書の範囲内の知識で対応できる設問と、論理的判断力や読解力を必要とする設問で構成されていたが、政治・経済分野では、安全保障関連法や防衛装備移転三原則、電力の小売の自由化などの時事的動向を意識した問題も出題された。


3.平均点
 5教科7科目(900点満点)総合での平均点は、理系で558点、文系で543点と予想される。

◇受験生諸君へ
 これまでの学習の成果が現れやすい出題内容であったので、目標得点をクリアした受験生も多かったと思われる。一方、日頃とは異なる緊張感の中、思わぬ失点をした受験生もいたのではないだろうか。
 得点に一喜一憂せず、夢の実現に向かって、力強く踏み出してほしい。
 2018年度入試はスタートを切ったばかりなのである。慢心してはならないし、焦る必要もないし、安全志向に走る必要もない。
 二次・私大入試の直前まで、初志貫徹の強い意志を持って、計画的な学習に徹した受験生にこそ栄冠は輝くのである。
 河合塾は、ガンバル受験生を応援し続ける!!

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